養生料理・六瓢(無病)息災「八日汁」(NHKシブ5時 シェフのヒトワザ!)

2021年2月3日のNHK「Newsシブ5時 シェフのヒトワザ!」で、井戸理恵子の養生料理・八日汁が放映されました。

放送ではお伝えしきれなかったことを、ブログとしてアップさせて頂きます。

「NHKシブ5時 シェフのヒトワザ!」養生料理・八日汁

https://www.nhk.or.jp/shibu5-blog/200/442938.html?fbclid=IwAR0I-ZTmbeiYWdww9FObpWA3ZXPNIEGPsLwwf4vjme6ECCW4bTyZmT9PKuw

 

六瓢(無病)息災「八日汁」

旧暦の1月8日は古く「八日汁(ようかじる)」というものを食す日でした。1月の「8日」に食べるので「八日汁」ということですね。

では、今年(令和3年)の旧暦1月8日はいつかというと、、、

2月19日(金)です!

なのでこのブログを見た方は是非、2月19日にこの「八日汁」を試して頂ければと思います。

ところで、1月8日の前日は何の日でしょうか?・・・そう、「七草粥」。

「七草」として知られている1月7日は、実は年に5回ある五節句の一番最初、「人日(じんじつ)の節句」にあたります。そして古来より「人日」の翌日は穀物を食べてはいけない日とされていました。この穀物とは五穀のことで、麻の実、粟、稗、麦、米、など。

旧暦1月8日、9日は、一般に二十四節気では立春から雨水くらいの時期で、農業の目安とされる頃。そこで「穀物がより実るように」との祈りを込めて、この頃に穀物を食べずに祀る儀礼があったのです。そんな祈りが背景にあるのが「八日汁」なんです。

穀物を食べてはいけない日に食べるこの汁には、旧暦のお正月に神々へ捧げたものを下げた、いわば、「年神様の力が篭った野菜」を入れます。さらに縁起を担ぐ地域では無病を六瓢(むびょう)とし、六つの瓢(ひさご)に捧げた食べ物を使うとして、6種類の具材を使うところもあります。

具体的な食材としては、縁起の良い「ん」のつく根菜類、にんじん、れんこん、こんにゃく、ごんぼう、だいこん、ほか、サトイモなどぬるぬるのもの、や揚げなどを入れます。揚げは「アゲ」で運気を上げる、などとにかく縁起を担いでいます。

旧暦8日は上弦の月。1月7日と7月7日は対になっており、どちらも正月、盆とあの世とこの世が繋がるとき、それに連なる8日は目のみえない「魔物」が現れやすいとされていました。この魔物との交流如何で魔物は神となり、十五夜でこの世の接待を受けてあの世へ帰る。という考えも。この場合、魔物とはご先祖様や縁のある方々であるがその見極めは難しいので昔は鬼もみな接待するという考えがありました。

「鬼でも魔物でもちゃんと接待して気持ちよくなって頂ければ、よい神に変わって、あの世へ帰ってからも守ってくださる」という考え方です。ポジティブですね。

また、この時期の魔物といえば「疫病神」。特に万病の元と呼ばれる風邪を引きやすい頃。しかし、この八日汁を食すと一つ目の魔物、疫病神が退散するともいわれています。旧暦の人日七草に7種類の草としての七草粥も食すと疫病神が唐土へ帰るという信仰がありますが、この七草も古くは7種類の穀物の種。穀物の種を食べることにより、心身に力が篭るとされました。つまり、「七草粥」も「八日汁」もこの時期に体調を崩さないように体を整えるために食されたのですね。

穀物を食べない日の「八日汁」ではありますが、上述の「七草(七つの穀物)」を食す風習と習合して穀物を具材に使うものも多いです。例えば蕎麦など。味噌で味をつける前の具材を取り置いて、蕎麦つゆに具材を入れて蕎麦すべりを作るのもよいし、寒い地域では味噌味のまま酒粕を溶かして食すなどの工夫もなされます。ネギ、芹、ミツバなど薬味を変えて、アレンジしても美味しく食べられる。他、筍、などを加えてもよいです。

今回の「シェフのヒトワザ!」では、旧暦1月8日に合わせて冬と春の分かれ目とされる時期、空の空気もゆるみ、氷の粒が雨と変わる雨水の頃に食する「無病息災汁」としての「八日汁」をご紹介しました!