民俗情報工学(みんぞくじょうほうこうがく)とは、古来先人たちが受け継いできた日本各地に遺る生活に纏わる「技術」を、民俗学的視点からその「意味」と「本質」を読み解き、現代に生かすことを目的とする研究分野である。 民俗情報工学研究家・井戸理恵子(ゆきすきのくに合同会社代表・多摩美術大学非常勤講師)が提唱した。

※「民族情報工学」と表記されることもありますが、民俗学(folklore studies)を基盤とするため、正式な表記は「民俗情報工学」です。

なぜ「情報」なのか

職人技術をはじめ、彼らに纏わる伝統儀礼、風習、歌謡、信仰、また地域特有の祭、習慣など。そこには、これから未来を生き抜く「日本人」への大いなる遺産としての情報があります。先人たちが心を砕いて子孫を守ろうとした「おもい」、人と自然との様々な「談らい」の中で紡ぎだされた多くの記憶——これらを単なる過去の風物としてではなく、現代に活用できる知恵の体系(=情報)として捉え直すのが、民俗情報工学の視点です。

研究の対象

  • 暦としきたり: 旧暦・二十四節気・五節供など、自然のリズムに寄り添う生活の知恵(例: デュアル暦手帳、アエノコト)
  • 職人と伝統技術: 麻紙・和紙・漆などの伝統素材と職人技術(例: 人間国宝 岩野市兵衛氏の協力による「麻紙」の復元)
  • 儀礼・信仰・祭り: 各地の伝統儀礼や神社の祭祀に込められた自然観
  • 食と伝統料理: 医食同源・養生料理など、季節と身体を結ぶ食の知恵
  • 風土と地域文化・自然: 災害の歴史、各地の地質的な特徴と文化の関係性

学術活動の例

民俗情報工学の知見は、民俗学の枠を越えて工学系の学会でも発表されています。

  • 「生命システムの数理と民俗学の接点」(応用数理学会)
  • 「大麻と伝統材料」「伝統材料に学ぶ人と材料との関係」(日本材料学会)
  • 「民俗情報の劣化と保存」(腐食防蝕学会)
  • 「耳が捉えるもの」(日本機械学会)

エコロジカルプランニングとの関係

多摩美術大学環境デザイン学科の講義「エコロジカルプランニング」(2003年〜)は、民俗情報工学の知見を踏まえながら「日本人のこころと自然観」を理解した上での環境設計のあり方を学ぶプログラムであり、民俗情報工学の教育面での実践です。

研究内容の参考動画

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